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顎関節症の原因は「顎」以外にひそむ

顎関節症の治療をしても治らない方へ

何らかの原因で顎の関節や筋肉に負担がかかっていると、「あごが痛い(顎関節痛)」「口が開かない(開口障害)」「あごを動かすと音がする(顎関節雑音)」などの症状が起こります。1つでも当てはまる場合には、顎関節症が考えられます。

 

一般的な治療としては、スプリント療法(マウスピース)で、噛みしめた時の顎関節や咀嚼筋への負担を軽減させる治療を行います。痛みが強い場合には鎮痛剤などの服用による薬物療法。改善が見られない場合には、歯を削る噛み合わせの調整や外的手術になるケースもあります。

 

顎関節症で鍼灸院へ来院される多くは、歯科医院や口腔外科を何件も受診しており、マウスピースでは効果を感じられなかったり、歯を削って噛み合わせを調整したのにいっこうに改善されないケースの方が多いように感じます。

比較的、症状の悩みが深かったり、長期間悩まれている方がほとんどですが、鍼の施術による改善例が全国の鍼灸院から数多く集まっています。

無意識にしてしまう癖が原因?

最近の研究では、顎関節症の方に多くみられる癖があると言います。それが「歯列接触癖(TCH)」です。

Tooth Contacting Habit(歯を接触させる癖)

食いしばり、歯ぎしり、TCH

人は通常(リラックス時)、上下の歯は接触しておらず、唇を閉ざしていても上下の歯は接触していない状態です。何かの作業中や考え事をしている時に、無意識に上下の歯が接触している人がいます。上下の歯を軽く接触させただけであっても、筋肉は働いてしまいます。つまり、上下の歯が接触している時間が長ければ長いほど筋肉は働き続け疲労することになり、顎の筋肉や顎の関節への負担を増大させることになります。筋肉が疲労した結果、顎関節への血行が悪くなり顎関節症を引き起こすという訳です。

また、歯ぎしりや食いしばりはTCH以上に強いため、さらに大きな影響を与え、顎関節のバランスが崩れ「顎」に異常が生じるだけでなく頭痛や肩こり、耳鳴りや耳の閉塞感(こもり感)など、その他の症状を「全身」に及ぼすこともあります。

TCH・歯ぎしり・食いしばりを無意識にする癖は日常のいたる場面で考えられます。

・パソコン作業

キーボード作業が普及した現代では、長時間のパソコン作業で上下の歯を接触させたままにする癖で仕事を続けている人が増えているようです。

・家事

炊事、洗濯、掃除など一人で黙々とこなす作業を徹底的に行うような完璧主義者の方が、知らず知らずにのうち、ずっと上下の歯を接触させたままになっているようです。

・ストレス

心理的不安感や緊張感が、無意識のうちに歯を接触させる状態を増やしているかもしれません。

 鍼灸師は「顎」だけでなく「全体」を診る

「顎」の緊張は「全身」の緊張を招きます。これは逆も言えます。「全身」の緊張が「顎」の緊張を招くという生理現象があります。

手足に力を込めようとした時、歯を噛みしめないと十分には力を入れられないですよね?このように「顎」と「全身」は密接な関係にあります。ならば、全身の緊張を解くことで顎の緊張は解けるということになります。鍼灸師には全身のツボをうまく使い、顎の緊張を解いて行くことが可能です。

顎関節症のツボ

顎周辺にもツボは存在しますが、痛みのある局所に鍼をすることは悪化させるリスクを伴います。そして、なかなか改善されない顎関節症は「顎」以外に主原因があります。

日常にひそむ、顎に影響を及ぼしている本当の原因を見つけ出して、ケアすることが鍼灸師の仕事です。

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